八章







待っていたとばかりの深淵の騎士は椅子より立ち上がった・・・・・・すると

「ヒヒーン!」

馬の鳴き声が聞こえたとほぼ同時にテントに黒き馬が無理やり入ってきた

深淵の騎士は愛馬が入ってきた瞬間飛び乗った

「名を聞いておこうか、人間よ」

「俺の名はフォンロン!」

そう言いながら短剣を抜き斬りかかった

「フォンロン・・・我の名はグラム、モロク侵攻軍指揮官・・・死ぬまでの短い間・・・覚えておけ!」

フォンロンの短剣をかわしながらフォンロンに向け槍を突き出した

それをバックステップでぎりぎりかわしたフォンロンは一息ついた

「ボーリングバッシュか・・・結構な威力だな」

「それをかわすお主も良い腕だ」

「それはどうも!」

フォンロンはすぐに短剣を繰り出しグラムはそれを捌きながら槍を突き出す それの繰り返しだ

フォンロンの部下や仲間たちはそれを見つつこちらに向かってくる魔軍兵と戦っていた

「何故モロクを落とす!」

「主よりの命令だからだ」

「主とは誰だ!」

「貴様なら知っているのではないか?」

フォンロンの質問にもグラムは攻撃を捌きながら律儀に答えていた

さすがにかわしきれなくなったなったのかフォンロンは徐々に傷を増やしていた

「どうした?その程度の腕か?ならば死ね!」

グラムが槍を構えフォンロンが突き出してきた


「ふっ・・・・・」

フォンロンは( ̄ー ̄)ニヤリッっと笑う

すると槍を突き出した先にはフォンロンはいなかった


「なに!どこだ!?」

グラムは辺りを見回しだした

「ここ♪」

フォンロンが現れたのはグラムの真後ろだった

「な!」

『奥義 雪風華陣』

無数に繰り出される毒付加された短剣 なんとかそれに耐えていたグラムだったが

「グガッ・・」

突然襲い掛かった痛みに苦痛の声を上げた

背中を刺されたのだ

背後を向くとそこには先ほどまで相手をしていたはずのフォンロンが短剣を構えつつ立っていた

「なに?!」

グラムはすぐに前を向くとそこには誰もいなかった

「な・・・ぜ!」

そう言いきる前にグラムは首を切り落とされていた





「呪いを掛けられ3回の攻撃で貴様が錯乱しただけさ」


落とされたグラムの首を見ながら言った










グラムの死を見た魔軍兵は戦意が完全に無くなり無秩序に撤退し始めた


ここに勝者のいないモロク攻防戦が終了したのだ










だが両軍の被害は甚大だった

モロクに派遣されていた討伐軍17万のうち無事なものはほとんど残っておらず司令官グラエスを始め14万もの兵を失った

モロクに侵攻していた魔軍約150万のうち総司令官グラムを始め120万が死んだ

お互い司令官を失った両軍は撤退を開始した

傭兵団は約3000名が命を落とした


その報告を受けた国王はモロクの放棄を決定

事実上、モロクは陥落してしまったのだ
















「くそ、俺たちがいながら・・・」

「焦るな、まだ終わってはいない」

「しかし!」

「時を待て」

「はい・・・・・」

朱狼たちはモロクの惨状を横目に見つつ撤収を開始した



フォンロンたちもグラムの首を箱に入れたあと朱狼たちと合流した

「ほれ、約束の首だ」

「あぁ・・・・すまなかったな」

「気にするな・・・・モロクは堕ちたのか?」

「ついさっきな、国王陛下よりの勅令だ『モロクを放棄し撤退せよ』とな」

「そうか・・・」

それだけ聞いたあと小さくなる砂漠都市モロクを横目にフォンロンたちも撤退し始めた
























つづく