五章










モロクの南に位置するオアシスから不思議な光が揚がった

全部隊進撃の合図だ




それを合図に傭兵団全ての部隊は進攻しはじめた




「モロクまでこの速度で30分たらず・・・敵との接触は25分程ってところか」


ペコペコを進めながら片手で双眼鏡を持ち全部隊の状況を見ていた
そういっていると別の騎士が近づいてきた

「フォンロンさんの部隊も動きだしたようです」

「よし、こっちが囮だということを誤魔化すように派手に動かせ、ただし速度は最速でな」

「了解、伝達します」

敬礼をして部隊より離れた騎士のことを気にせず朱狼は声を上げた

『全傭兵団兵士諸君!今回の戦いはモロクに侵攻している魔物の軍勢の壊滅である、戦力の差はいかんともし難いが諸君らの力を集結させ是が非でも敵を殲滅するのだ!」










『おぉおぉぉおぉぉ!!』



朱狼の声に答えるかのように傭兵団から声が上がる


「全部隊、全速を持って進撃せよ!!」

「おー!」









ここに傭兵団はモロクに集合した全部隊進撃を開始した

















「派手な演出をしやがる・・・・」

フォンロンは朱狼の声を聞きながら苦笑いを浮かべていた

「隊長・・・」


「わかっている・・・ケルベロス、出陣」

フォンロンはそれだけいうとマスクで口を覆い動き出し、他の仲間たちも彼と一緒に動き出した。










ここに傭兵団に所属するすべての部隊は出陣を完了した






























モロクを襲撃していた魔物の軍勢は南より接近する傭兵団の接近に気がついた

すぐに魔物の軍勢・・・これより魔軍と呼称

魔軍は3割程 約50万ほどを向けた

それにはモロク駐在討伐軍 ・・・・これよりモロク軍と呼称

モロク軍も察知し傭兵団より放たれた伝書鷹より手紙を受け取り完全に理解した

「将軍、すぐに開門し打って出るべきです!」

「なにを言う!まだ魔軍は100万程残ってるのだぞ!?」

「なんだと!貴様、弱腰になったのか!」

「貴様こそ!冷静な判断力もないガキか!」

モロク軍首脳部は現在真っ二つに意見が分かれていた


「黙れ・・・」

凛とした言葉が会議をしているテント中に響いた

罵倒中傷していた幹部たちも激論をやめその声の主を見た

モロク軍 総司令 グラエス将軍が奥に座っていた

「現在の状況は?」

「ハッ!現在、このモロクに襲撃をかけていた魔軍の3割ほどが傭兵団に向かっていったと予測されます」

「ふむ、現在の我が軍の状況は?」

「派遣されていたモロク軍総勢17万のうち死者539名 重傷により戦闘不能の兵は3000名を超えています」

「うむ、全部隊の配置状況は?」

「南に7万1千、東西に2万ずつ 北に4万 中央に3万5千の兵が配置してあります」

「上出来だ、傭兵団が敵と接敵し交戦が確認されたらあれを出し使用したあと北と・・東西総数をもって遊軍とし魔軍西側を攻撃する」

「しかし!」

グラエスの言った作戦内容を聞いた幕僚の一人が意見を言おうと立ち上がったが

グラエスは手をかざし制した


「遊軍が交戦する少し前にあれを使用する、あれで大部分の敵を葬ることが出来るだろう・・・しかし・・・」

グラエスは言いにくいのか口ごもった、すると幕僚の一人が変わって喋りだした

「あれは現在、軍が極秘裏に開発している兵器で使用する・・・一発は確実に撃てる・・・だが、78%の確立で暴走・・・爆発する」

「そんな・・・」

「それで・・爆発した時の被害は?」

「半径一キロは焦土とかす・・・・」

半径一キロ・・・この狭いモロクでそれだけの規模の爆発が起これば大多数の味方を巻き込むことになる

「しかし、それでは・・・」

「どの道、このモロクは落ちる・・・市民や負傷兵は現在転移術によって首都に移送している、その作業も間もなく終わりこのモロクは兵を除き無人の都市と化す」

「・・・・・・・モロクが堕ちますか・・・」

「ならば・・・首都本営部隊に後を任せよう・・・」

「兵たちの中で家族や恋人・・・守るべき人がいるものは全て除外し首都に送れ、強制的にだ」

「了解しました、直ちに調べ上げます」

そういって幕僚の一人が部下を引き連れ会議室より去った


「・・・・・・・剣聖と謳われたグラエスの散り様を魔軍に思い知らせてやる・・・」




グラエスはそう静かに宣言し・・・幕僚たちもまた頷いた



モロク軍・・・少なくともグラエス以下幕僚たち ここにいるメンバーは全て死ぬ覚悟は出来た














ここに、モロクの悲劇と呼ばれる出来事の準備は整った
















続く