十章
それは偶然なのか……

否、偶然は無い……必然のみ






魔争戦記


十章






槍を投げた祐一は結構ハラハラしていた。

「(ふぅ……当たった……佐祐理さんは無事みたいだな)フェイラン!」

「ここに!」

いつのまにか、祐一の隣に一人の騎士が来ていた。

「二百を指揮して佐祐理たちを護衛しろ」

「了解!第二・第五・第六・第七中隊、着いて来い!」

小隊が十名

中隊が一小隊五つ合わせて二十名

大隊が一中隊五つ合わせて二百五十名

フェイラン大佐は祐一から指揮権を与えられている為、許可があれば中隊規模であれば自分の判断で連れることが出来る。

「第9中隊、敵を蹴散らせ!」

「「「「「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」

第9中隊はランスを構え、一気に突撃していく。
華音兵は向かってくる第9中隊を迎撃するため手すきの者から行動を開始した。

「狙うは敵華音兵の全滅のみ!一兵たりとも生かして返すな!」

祐一は、中隊の兵に聞こえるように命令を下した……見敵必殺、出会った敵はすべてに死を……






祐一は第九中隊の援護の為、第三・第四中隊を向かわせ第二大隊を、静香が指揮し連れている亡命者の為に既に残してきている。
残っているのは第一大隊と第三大隊に所属する四中隊だ。
それでも圧倒的である。
質が悪いわけでもない、量もそんなに違わない。
単純にエレ二ア兵が強すぎるのだ。
だから、簡単に殲滅される。
華音兵を駆逐し終えるのに、五分と掛からなかった。

「祐一様、華音兵の殲滅完了しました」

「ご苦労、周囲の索敵は?」

「現在百名にやらせておりますが、今の所見つかっておりません」

「ふむ、まぁいい佐祐理や味方になる華音兵の負傷者を収容後に撤退する。周囲の警戒を怠るな」

「了解しました」

兵が祐一に向かって敬礼し、その場を去る。
祐一は馬の手綱を引き、佐祐理たちのいるとこに向かうよう馬に命令した。
馬はそれに従い素直に佐祐理たちの下へと静かに、かつ確実にゆっくりと歩んでいく。

「大丈夫だった?佐祐理さん」

「はい、助かりました〜祐一さん!」

祐一に向けて精一杯の笑顔を向ける、それが今出来る最高のことだ。

「さ、行きましょう」

そう言って祐一は、佐祐理さんを自分の後ろに乗せた。

「はい!」

佐祐理は落ちないように、祐一の腰に手を回した……その顔は、非常に嬉しそうだったりする。(ほのかに顔が赤いしな(作者)

「フェイラン、準備はよいか?」

「はい、負傷兵の収容は既に完了しました。現在、偵察兵を出して周辺の探索をさせていますが発見できません……おそらく、これ以上の追撃はないかと」

「そうか、偵察兵を戻せ……これよりライネリア城へと向かう、信号弾を撃て」

「了解」

フェイランは部下の一人に合図するとその部下は持っていた筒を空へと向け筒から出ていた線を引き抜いた。
筒から弾が飛び出し上空で破裂した、破裂した弾は赤い煙を出しよく目立つ、赤い煙は撤退命令の意味がある。

「撤収する!」

祐一の号令と共に負傷兵を保護し自分の馬の後ろに乗せた兵たちがそれに続く。
亡命者たちは既にライネリア城に着いてる頃だ、ライネリア城に祐一たちが着けば負傷している華音兵は、首都の病院に送られる手筈になっている。
祐一たちは少し速度を上げながら走っている、その時佐祐理さんが問いかけてきた。

「祐一さん?そう言えば何故あの場所に?」

「あぁ……集合の場所に着いていたんだが、なにか悪い予感がしてね、迎えに来たのさ・・・運がよかったがな」

祐一は振り向きながら笑顔を向ける、それを見て佐祐理は顔を赤く染めるが・・・・ご愛嬌だな。
そうこうしているうちに、ライネリア城の前にある川に近づいていた。
その川は意外と大きく川が流れている、その流れこそ緩やかであるがその深さはかなりあり、川を渡るなら随所に設けられている橋を渡る必要がある。
橋には既にエタニア軍が警備を固めていた、祐一たちの姿を確認した警備兵たちは、一斉に敬礼しながらすぐに橋に備え付けてある門を開く。
祐一たちも敬礼しながら速度を落とさずにその門をくぐり一直線にライネリア城へと向かう。
ライネリア城城門では、祐一たちの帰還を待っていた純一たちがいた。

「戻ったね、祐一」

「あぁ少し疲れた」

「動いてないだろ?」

「馬に乗ったからね」

「とりあえず無事に戻ってよかった、祐一」

「あぁ無事に戻ってこれたよ、純一……音夢たちは?」

「城内で色々と準備をしている」

「そうか、じゃ行きましょうか」

佐祐理にそう言いながら馬を進める、純一も馬に乗り祐一と共に城へと向かう。







混迷を続けるエタニア対華音


前哨戦とも言うべき、亡命者たちの逃亡劇はエタニアに軍配が上がったが……はてさてどうなるか?










続く