今日は前回の続きから書きますね?
魔争戦記
七章
誠也の私室……書物に埋もれたその部屋、誠也が現在に至るまで書物と言う書物を集め続けている。
魔道書・剣術書・伝説の記述書など、様々な分野の物が集められている。
誠也は、寝る前と休みの日の半分くらいをこの私室で過ごしている。
その部屋には現在 倉田誠也 倉田静香 倉田佐祐理 倉田一弥 執事長のウォール 倉田兵団総隊長の森山一樹が集まっていた。
「揃ったな、ではこれからの事について話す」
「「「「「はい」」」」」
誠也の言葉に他の5名が頷く。
「今日、女王陛下より勅命が下った……エタニアを潰せと」
「そんな!」
「お父様!」
「父さん!」
「───」
「旦那!」
「静まれ、私だって従う気はない……だが、やらねばならん……仮初めといえどもな」
それだけ言うと誠也は、ニヤリと誰もが思えるように笑った。
「それでは?」
「私はエタニアに亡命する、私直轄の兵約千名は各自の意志に任せる」
「我らの心配などご無用です」
そういい一樹が一歩前に出て話し始めた。
「私を含めた兵士たちは皆、主である誠也様に拾われ人間として認められ誇りと強さを教わりました。例え誠也さまが死ねと言われようとも、我らは皆、喜んで貴方の為に命を散らす覚悟は出来ております」
そう力強く誠也たちに言った。
「たとえどんな状況であろうともそういう命令は言わぬよ」
「承知しております」
「では兵士の家族と最小限の護衛部隊を準備させよ……目標地点だが」
そう言いながら、誠也は机の引き出しから一枚の地図を取り出した。
「この地点だ」
「ここは……たしか国境近郊の森林地帯ですね」
「そうだ、魔獣などもいない比較的安全度の高い場所だ……そして、エタニア領に一番近い森林地帯でもある」
「なるほど、それは承知しました護衛部隊の選抜いたしますが……」
「なんだ?」
「この首都を出るには数的に難しいと思われますが」
「その点なら問題はない、このポイントだ」
誠也が指した場所には、紅い点が記されている。
場所は首都南西ブロックの一つの建物。
「この屋敷には秘匿した地下通路がある、城門より南部2キロ地点の森に繋がっている。この屋敷に入るには我が屋敷ともう一つの場所から地下通路を使いこの屋敷へと辿り着き、この屋敷から再び地下通路を使い城外へと出る……状況が状況なだけに、馬や馬車を使うことが出来ないので全員徒歩での移動となる」
「ふむ、問題は移動するタイミングですね」
「その点に関しても考えはある、1時間おきに三百名ずつ最低限の荷物を目立たないように持参しこの二つの屋敷へと訪問という形で訪れる」
「なるほど、兵士たちは二つの場所に詰めているわけですから見送りと認識され発覚する確立が減るということですね?」
「そうだ、だがこれには問題点が二つあってな・・・一つは見送りに訪れた家族が屋敷から出て行かないこと・・もう一つが監視者の存在だ」
「現在までに、我が倉田家関係各所に配置されている監視者の数は8名それが二交代の24時間体勢で監視している模様です」
「ふむ、成り変るとして精々本部を騙せるのは3時間が良いところか……下手をすれば、まだ少ない」
「ぎりぎりと言う所ですね、問題は突発的妨害がおきるか否かですね」
「その点も考えられるがしょうがない、警備の兵を増やし備えるしかない」
「は、承知」
森山は頷いた。
「静香、佐祐理と一弥たちを連れて兵士の家族と共にエタニア領へと向かえ」
「わかったわ、貴方」
「わかりました〜お父様」
「はい、父さん」
3人は力強く誠也に頷いてみせた。
「ウォール」
「はい、旦那様」
「物資などを通常より多めに用意してくれ、我が軍団の進軍と共に持って行く」
「……畏まりました」
ウォールは誠也の意図を悟り、異を唱えなかった。
「進軍は2日後、我が家族を含めた非戦闘員の亡命部隊は明日首都を脱出し、目標地点である森林地帯を目指し移動を開始する」
「はい、ではすぐさま準備に取り掛かります……では」
そう言い、森山とウォールが退室した。
「静香・佐祐理・一弥……苦労をかける」
そう言い、誠也は慈愛に満ちた気持ちで妻子たちに頭を下げた。
その様子を見た静香は……
「なにを言ってるの、貴方……私は、貴方と子供たちと共にあるの……気になさらないで」
「静香……」
「私もお父様を信じています、たしかにこの所の華音帝国……いえ、帝国はどこかおかしいと思います。お父様の考えが私は一番正しい選択だと思っています……だから、佐祐理はお父様を信じついていきます」
佐祐理は静かにだがはっきりと断言した。
「佐祐理……」
「僕も父さんを信じるよ、僕はあんまり難しいことはわかんないけど今の華音がおかしいってのは前々から思ってる。なら、正せるのなら正せるよう努力すればいい……それが例え、どんなに苦難の道であっても」
「・・・・一弥」
誠也は立ち上がり三人を優しく抱きしめた。
「「「貴方(お父様)(父さん)」」」
「私は雄二がやろうとしてることが一番この世界に大事なことだと思っている、その為なら俺はどんなことだってやり遂げてみせる」
「「「はい」」」
「俺を信じてついて来てくれるか?」
「「「はい!」」」
誠也は今、親子の絆の強さを心の底から感じていた。
誠也が言った作戦通り、すべての事は順調に運んだ。
誠也の家族を含めた兵士たちの家族、約三千名は約三百名ずつ二つの屋敷を訪れ、地下通路を使い城門より外へと脱出した。
先に脱出していた護衛部隊の兵士たちが、名簿を確認しながら非戦闘員……これより亡命者と呼ぶ。
亡命者たちの確認をしていた。
亡命者たちはスムーズかつ予定通りに、全員が首都より脱出を完了した。
最後の亡命者を見届けた誠也たちはすぐさま地下通路を封鎖した。
その作業を完了した誠也たちは鎧を着込み、兵団を待機させてある敷地へと馬に跨り向かった。
倉田誠也率いる軍団 総勢千百三十二名がまるで線を引いたかのように、直立不動で誠也たちが到着するのを待っていた。
市民たちはその光景を遠巻きながらに眺め、秋子女王もそこを見渡せる城の一角で眺めていた。
そこへ鎧に身を包んだ誠也たちが現れた。
兵士たちは誠也の姿を確認すると一斉に敬礼した。
誠也もそれに答えるように敬礼しながら兵士たちの横を通り過ぎる。
誠也が先頭につき、騎兵たちも馬に跨った。
『これより我らはエタニアに向け、侵攻する!各々死を恐れずに戦え!全部隊進行!!』
『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』
誠也の激を受け、兵士たちは天高く握り拳を上げ雄たけびを上げた。
その光景を女王が貴族が市民が見守り、誠也は開かれた城門より進行を開始した。
さて、ここで誠也たちの部隊構成を記載しておこう。
誠也率いる騎馬部隊四百五十名
森山率いる重歩兵部隊五百三十名
物資を満載した補給部隊二百二名
計……兵千百三十二名 馬六百頭 物資三十八トン
そして、進軍に合わせるように城壁に装備された大砲から祝砲が発射された。
また、それに合わせるように亡命者部隊も同様に、秘密裏に行動を開始した。
だが、この亡命者集団の情報は漏れていたのである。
つづく
七章
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