今回はどうしましょうか〜そうですね、華音を出発した佐祐理さんご一行と祐一さんとの合流のところを書きましょうか♪
魔争戦記
六章
窓には黒いカーテンがかけられ、蝋燭の明かりのみであり部屋の外には門兵が数名待機している。
ここはエタニア国のレイグラント城 軍団会議室の一室だ。
ちなみに……この会議室は祐一たちがいつも使っている会議室でもある。
「ま、部屋を暗くしたのは雰囲気だ!」
「誰に言ってやがる!」
純一が意味不明なことを言ってきたので、祐一は持っていたペンを投げつけた。
「あの〜団長?・・・ものすっごく痛いんですけど?」
純一の額には見事にペンが突き刺さっている。
「あぁ気にするな、痛いようにやった」
「さいですか」
純一はそれだけ言うとペンを抜き座った。(血は? 血はどうした?出てないのか?!)
「さ、話を戻すぞ」
「「「「「「はい」」」」」」
会議室の真ん中には大きな円形のテーブルがあり、祐一は一番奥に座っていた。
他の六名も、テーブルを囲むように座っている。
「現在、倉田家のご家族を含む亡命の人々が城より北東三百八十キロの場所に向かっている……予定は、あと三十七時間と言ったとこだ」
祐一とは向かいの席に座っていた者が口を開く。
「本営はどこにおくのですか?」
「最北端のライネリア城に本営を構え迎撃準備を整える予定だ、現国王もあと数時間もすれば軍団を率いてここより出発する……以後、王妃である母 裕香が王代理を務めることになった。問題は敵の総規模が不明瞭なところだ」
祐一の隣にいた者が、祐一に質問するために口を開く。
「不明瞭とはどのように?」
「倉田家の兵力は気にしないでいい、問題は第二侵攻軍団だ……だが、規模が今だにわかっていない」
「予測される規模は、現在どのくらいなのでありますか?」
「最低でも三十万 最高では百二十万と言った所だ」
「我々の軍団が五十万……どちらにしても難しい所ですね」
「そうだ、先ほど非常召集をかけ動員しているが……どちらにしても時間がかかる、魔族側からも手をかすと言ってるが、こちらに来るまであと八十二時間はかかる」
「第二侵攻軍がこちらに到着する予定は?」
「一週間後と見ている」
「一週間ですか……結構早いですね」
「これでも遅いくらいだと思ってくれ、あの秋子のことだ……我らが思いもよらない行動に出てくるだろう」
「あの冷酷なる魔女ですか」
「そうだ、人間以外の種族を認めず、帝国に住む我らこそ最高の種族であると驕り、見下す者たちの頂点にたつ女だ」
「怖いです」
「そうだね、音夢……まぁ、なんとかなるだろうが今の問題は第二侵攻軍とONE派兵軍だ」
「ONEも派兵してくるのですか?」
「掴んだ情報通りならな、規模は四十万だ。詳細はまだ判明していないが、時間も第二侵攻軍到着とほぼ同時と見ていいだろう」
そう言いつつ、祐一はテーブルに滑らせるように書類を中央に飛ばした。
「我々はこれよりどうするんですか?」
「まず亡命者たちと合流・護衛しつつ我らの領まで連れてくる、その後は第二侵攻軍と交戦する予定だ」
「亡命者たちの数は?」
「二千ないし三千と言った所だ、まだ情報があがっていないから不明な点も多いがなんとかなるだろう」
「連れて行く兵の数は?」
「五百名の騎馬兵のみだ」
「大丈夫ですか?」
「それ以上多ければ敵に発見され、亡命者たちが命の危険に晒される可能性が高くなる」
「たしかに」
「五百名の選抜を……純一、お前に頼む」
「わかった」
純一は先ほどまでとは打って変わって、真面目な表情になり頷いた。
「音夢は俺の代理として軍団を率いてライネリアまで進軍しろ、到着次第すぐに兵の状態と武器・弾薬・食料の調査にかかってくれ……一人では大変だろうから、美春とことりを付ける……存分に、使ってやれ」
「了解」
音夢は力強く頷いた。
「選抜された騎馬隊はあと三刻後に秘密裏に出発させ、携帯食料を三日分携帯させておけ」
「他の者は兵の士気を高め訓練に励め、以上だ」
「エタニアに天の加護を!」
音夢が立ち上がりつつ、そう言い祐一にやったように敬礼する。
祐一や他の面々も立ち上がり、音夢と同じ敬礼をし会議室をあとにした。
所変わってここ、華音帝国領 倉田家の屋敷
華音帝国の建国当初から国の中心に深く関わり、時には己が生命を持って王を守ってきた一族である。
知の久瀬や武の北川・美坂家などには叶わないが、その持てる知力・財力・武力によって、華音内に確実な実力を残してきた名門の一族だ。
その倉田家も、あと僅かで終わる。
門が外開きに開き、護衛の騎兵を先頭に倉田家当主 倉田誠也が乗っている馬車が続く。
馬車は屋敷の前に止まり、出迎えた使用人の一人が馬車の扉を開けた。
まず始めに執事が降り脇に構え待った。
そして誠也が馬車から姿を現す、誠也の姿を見た使用人たちは一斉に頭を下げ……
「「「「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」」」」
「あぁ皆、ご苦労様……子供たちはどこにいるかな?」
「お庭のほうで読書を為さっているを、つい先程見かけましたが?」
使用人の一人が誠也にそう報告する。
「ふむ、そうか……各自戻っていい、ウォールは準備にかかってくれ」
「畏まりました」
ウォールを始め、他の使用人たちも再度一礼した後、各々の持ち場に戻って行った。
「どう切り出したモノかな」
誠也は子供たちにどう言うか、正直悩んでいたがこのままでは遅々として行動が進まないことを知っている、だからまだ考えが纏まらない状態であっても会わなければならなかった。
倉田家庭園
庭園には現在、二人の男女がいた。
男のほうはまだ幼さの残る少年でもう一人は若いながらも華麗さを兼ね備えた少女がいた。
少年のほうを一弥と言い、少女のほうを佐祐理と言う。
一弥は練習用の刃落としをした小太刀を二本もち、練習用に庭園に設けられた杭……藁を丸太に巻き、更にその上に重装の鎧を付けて硬度を持たせつつ、仮想の敵とし練習していた。
佐祐理はそれを眺めつつ、椅子に腰掛け古い書物を読んでいた。
仲の良い姉弟の姿がここにあった。
「一弥〜」
その時、佐祐理が一弥を呼んだ。
「なんですか?姉さん」
一弥はすぐに反応し練習を止め、佐祐理のほうを向いた。
「そろそろ休憩にしてお茶にしましょうか〜」
「はい、わかりました」
小太刀を傍にあった石に置き、佐祐理のもとへと駆け寄った。
佐祐理は紅茶と茶菓子を用意して一弥を迎えた。
二人は椅子に腰掛け、話に華を咲かせる。
「そう言えば父さんは、今日何のようでお城に行ったんですか? 姉さん」
「え〜とですね〜……たしか、女王陛下よりの緊急のお呼び出しがあったとか、出かける前に言ってましたね」
「なるほど……」
ズズー……ってちょっとまてぃ! 紅茶じゃなかったのか! 一弥が飲んでるのは湯飲みに入っている緑茶だぞ!!
「そう言えば一弥?なんでお茶飲んでるの?」
佐祐理さん! いい所に気が付いた! つうかもう少し早く気づけ!!
「あれ?なんででしょう?」
お前もわからんのか!?
「あはは〜」
笑って誤魔化さないで佐祐理さん!(泣
「あれ?父さんが戻ったみたいですよ?」
「え?なんでわかるの?」
「気配です、この位騎士として当然の事ですよ」
「なるほど〜」
「と言っても、まだまだ祐一兄さんには敵いませんけどね」
「祐一さんが目標って言ってたね〜一弥は」
「はい!祐一兄さんは強いです、恐らくこの華音の誰よりも」
一弥の言葉はなにかしら確信めいた感じがあった。
「佐祐理、一弥?」
「お父様」
「父さん」
父である誠也の姿を見つけた佐祐理と一弥は立ち上がり、誠也に向かって笑顔と共に駆け寄った。
「「お帰りなさい、お父様(父さん)」」
「あぁただいま、佐祐理・一弥」
そう言いつつ、誠也は二人の頭を両手で撫でた
佐祐理は嬉しいのか笑顔が更に輝きを増し、一弥は恥ずかしいのか俯いた。
「二人とも、私の部屋に来なさい……大事な話がある」
「大事な話ですか?」
「そうだ、ここでは言えない……来たまえ」
そう言い残し、誠也は二人を撫でるのを止め屋敷の中へと戻って行った。
佐祐理と一弥も、それに付き従うように後に続いた。
つづく
六章
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