第一幕 五章
そうですね、今日はONE連合国の事でも書きましょうか?







魔争戦記



五章





ここは……ONE連合がある北東の大地、壮大な草原が広がりその中心には防壁に囲まれたONE連合の首都【レフェリア】がある。

現在、レフェリアは慌しかった。

華音と取り交わした友好条約に則って、ONE連合の擁する兵力四十万を送り出そうと言うのだ、現在ONE連合はレフェリアを始め全土が慌しかった。

「なぜ我らが派兵しなければならないのですか!」

ONE連合総会議室では、議論が白熱していた。

「友好条約に則っての行動だ、当然であろう」

「しかし、それは華音帝国が他国より侵略された場合だ! これでは、我らは侵略に加担しているようなものなのだぞ!」

現在ONE連合は二分していた。
歌音と共にエタニアを攻めるべしという魔殲滅支持派
それを否定する魔保護支持派
七対三という比率で、魔保護支持派は苦しい立場ではあるが、支持派には有力部族や貴族が附いているため魔殲滅支持派も迂闊には無下に出来ないのである。

「これは我等の盟主が決めたことだ、変わることはない!」

「その盟主が、独断で決断したことであろう!」

盟主と言っても独自の裁量権は少ない、主にこの総会議で決議されたことの最後の決断を盟主が行い大々的に発表するのが、ONE盟主の役目である。

「しかし!」

「まあまあ、お二方ともお待ちなさい」

熱くなっている二人を諭すように一人の老人が口を開いた。

「しかし、長森様……このままでは」

「わかっておる、我等が盟主【折原 功治】殿が華音帝国と同調し、エタニアに向けて勝手に派兵するなどあってはならんことだ……」

「長森様!」

「ふぉっふぉっふぉ、わしが今一番危ない事を言っとるのは理解しとるよ? だがな……誰かが言わねばならん」

「───」

老人にそう言われ、他の面々は押し黙った。

「まあよい、盟主がそう決めたのなら従うとしよう……里村くん、準備の方は?」

老人が呼び見た先には、一人の男性が秘書と思われる者と相談していた。

「あぁ……はい、現在までに二十八万が召集完了し、残りもあと数時間以内には集合完了する予定です」

「そうか、椎名くん編成のほうはどうなっておる?」

老人が前を向き、椎名と呼ばれた男性は立ち上がり報告を始めた。

「はい、現在までに三個師団までが編成完了しております。編成は順次行っており、あと二十時間以内には編成完了し派兵が可能となります」


ここで説明しておこう……

【魔争戦記 独自設定】

一個師団とは…… 

一個大隊(五千名)
    ↓
一個軍団(二万名)(一個大隊四つ)
    ↓
一個師団(十万名)(一個軍団五つ)

上記が、大まかな分け方でその他にも魔術士部隊・諜報部隊・工作部隊など様々な部隊があり、ONEではそれぞれ独立している。

「よろしい、上月くん師団長選抜はどうかね?」

「はい、各部隊の隊長選抜も順次平行して行っており、編成完了と同時に完了予定です」

「ふむ、物資のほうはどうかね?川名くん」

そう言われ立ったのはまだ若い女性であった。

「はい、四十万将兵が半年は飢えない量の物資を用意させていますわ」

「うんうん、上出来だ……七瀬くん、折原盟主に事の詳細を報告してくれたまえ」

「はい、一時間後には纏めた資料をお渡し出来ます」

「では、今回の総会議はこれまで、各自持ち場に戻り最善を尽くしてくれたまえ」

そう老人が言い、グラスを掲げた。

それに従うように他の五人もグラスを掲げ……


「「「「「は!!全てはONEの為に」」」」」


そう言って、グラスに入ったワインを飲み干した後、グラスを床に叩き付け全員が出て行った……否、老人ただ一人だけは残っていた。




「また、戦乱の時代が来る……か」

老人はやるせない思いに囚われていたが頭を横に振り、杖を使って会議室をあとにした。





これが、ONE連合国が派兵の時の上層部の様子である。











その頃、レフェリア軍令部では……


「折原師団長!編成表をお持ちしました」

大きな声で入って来た兵士に対し、第一師団長 折原 浩平が気だるそうに……

「あぁ……わかった、机に置いておけ」

「はっ!」

そう返事を返し、兵士は編成を事細かに書き記した書類の束を机に置き、折原にあてがわれている師団長室を後にした。

「ったく、なんで俺が親父の野望に付き合わなければならん……」

「それは仕方ないよ、浩平の小父様はこの国の盟主なんだから」

「出たな!だよもん星人!」

「だよもん星人じゃないんだよもん!」

言ってると思うが(作者)

「しかしさ〜こう刺激が足りないね〜」

「なにを物騒なこと言ってるの、これから戦争が始まるのよ? 緊張感でももったら?」

「ひどいな、長森のほうはどうなんだよ?」

「どうって?」

浩平の質問の意図を図りかねて問い返してきた。

「この戦争のこと、おかしいとは思わないか?」

「まあ、それは言えるかも……華音がエタニアを敵視してるのは知ってたけど、今回の様に露骨な態度に出る事は今までなかったもんね」

長森は、そう言いながら師団長室にあるソファーに腰掛ける。
折原は、執務机に足をかけながら椅子に座っている。

「なにかが変わったのかもしれないな……」

「なにがって……なにが?」

「それはわからん、だが……今回の戦争……簡単には終わらないだろうな」

「わ! 浩平がシリアスな事言ってる! 明日は、天変地異でも起きる?」

長森は慌てた様子でソファーから立ち上がり、窓に駆け寄り空を眺めだした。
その様子を見ていた折原は……

「おい! たまに俺が、今さっきみたいなシリアスな事言うとそう言ってないか?」

「気にしないでライフワークみたいなものだから♪」

「ライフワークにすんじゃねぇ!」

「あはは〜w」

「で、どうなんだ士気のほうは?」

急にシリアスな表情になる浩平と瑞佳

「あんまり高くないよ、それに錬度も低い……まさに、烏合の衆って言ってもいい状態」

「やばいな、精鋭のエタニアに戦争をしかけるってのにそれじゃ全滅させてくださいって、言ってるようなもんだな」

「そうだね、今川名さん達に訓練させてるけど……正直どこまで出来るか」

瑞佳は、腕を組みながら溜息をついた。

「はぁ……一番の問題は華音との共同侵攻だな」

「そうだね、予定には間に合うだろうけど思い通りには動かないって思ったほうがいいよ」

「むぅぅぅ……浩平ちゃんダイピ──ンチ!」

唸る浩平のボケ!

「・・・・・」

瑞佳の突っ込み秘儀【スルー】(別名ボケ殺し) 

「突っ込めよ!」

「いい天気だね〜」

「更にスルーか?!」

っと、まぁこんな感じで賑やかな感じで進んでいるが……はてさて混迷の一途を辿るこの戦争……どうなることやら?




つづく