第一幕 四章
さて、今回はエタニア国の事を書きましょうか……










魔争戦記


四章










エタニア国首都 レイグラント城


「ふむ、誠也め……味なことをしおる」

王城の奥、王の間に椅子に腰かけ伝書鳩によって届けられた手紙を読み、苦笑いを浮かべていた。
エタニア国現国王【相沢雄二】その人である。

「しかし、この役目ワシにはちと荷が重そうだな」

そうなのだ、現在雄二は国王の立場にはいるものの隠居のような生活を送っていた。
それもこれも……

「父さん」

いつのまにか入っていた青年が、雄二のことを父と呼んだ。

「祐一か、どうした?」

相沢祐一……雄二の実の息子にして次期国王であり、現在はエタニア国近衛騎士団の団長を務めている。

「華音が動くのか?」

「良くわかったな」

「風の精霊が教えてくれた、それに仲間たちもなにかしら感じているらしい」

「あぁ……誠也から連絡があった、女王からの勅命でこっちに来るらしい」

「使者………ってわけじゃないだろうな、侵攻か?」

「そうだ、誠也はやる気はないらしいが……どちらにしても、大義名分を作られ侵略してくるだろうな」

「わかった、近衛騎士団に戦闘待機させておくぜ?」

「好きにしろ、ただし誠也の部隊は俺の直営師団を動かすぞ」

「へぇ……ってことは、エタニア最精鋭のガルシャウラ軍団が動くのか、見物か?」

「いや、戦闘と言っても建前だけだ、けが人はでても死者は絶対にでらん」


雄二が言った言葉の真なる意味を悟った。

「……寝返ってくるのか?」

「──あぁ」

「わかった、俺達の部隊はどうするんだ?」

「誠也の家族を含め、兵士たちの家族をある場所に向かわせてるそうだ、そこに向かい合流しエタニアまで護衛して連れて来い」

「了解した、準備してすぐに動くぞ」

「うむ、俺も時になったら出陣するからな」

「イエッサー」

祐一は少しふざけながら王の間から出て行った。

「誠也の子……たしか佐祐理と一弥と言ったか、佐祐理という子はこの前会った時は小さい娘だったが・・・今は17歳だったはずだな、美しくなっているだろう」

雄二の中では 祐一×佐祐理の図式が出来上がっていた。

「ふふふ……」

雄二のその時の顔は、まさに子を思う父親の顔であった。



その頃、王の間より退室した祐一は……

「団長、どこ行ってたんですか?」

王の間を出てきた祐一を待っていたのは一人の少女であった。

「音夢か、純一はどこだ?」

音夢と呼ばれた少女は、茶色い髪に深い緑色の瞳が印象深い子で体に軽装アーマーを身に着けていた。

「兄さんなら庭で昼寝してるのを、つい先ほど見ましたけど?」

「会議室に呼んでくれ、ついでに他の将校たちを全員同じように呼んでくれ」

「わかりました、時間はいつですか?」

「今から一刻半で集めてくれ」

「はい、では」

そう言い、音夢は胸の前辺りで右手を水平に左に曲げ一礼したあと、小走りに兄である純一が未だいるであろう庭に向かって去った。

「音夢も大変だねぇ……ぐうたら兄貴を持つと」

「だれがぐうたら兄貴だ?」

「そりゃお前、純一に……って、オイ? いつのまに俺の横に来た? 杉並」

「はっはー気にするんじゃないぜ? MY同志、それは企業秘密ってもんだ」

「まぁ、気にはしないが」

この男……杉並という名の青黒い短髪のこげ茶色の眼が印象深い、杉並は体に鎧をつけておらず黒い衣装に見に包んでいた。

「で、首尾は?」

「情報が二つ、良い情報と悪い情報どっちを先に聞く?」

「悪いほうから聞こうか」

「そうか、まずONE連合国が動き出そうとしてる」

「へぇ……数はどのくらい?」

「総兵力の二割弱だが……兵四十万だ 詳細はまだ不明」

「……やばいな、それで良い方は?」

「ふむ、魔界部族会議が先ほど一つの議案を通した」

「ほぅ、それで?」

「天狼族・人狼族・龍人族・エルフ族・ドワーフ族の以上五つの魔族が、我らエタニアに向け援軍を用意している、あと数日以内に魔界エタニア門よりこちらに到着する予定だ」

「助かる、それだけの魔族が援軍として加勢してくれれば幾分かマシになるな」

「そうだな、だが油断はできんな」

杉並はため息をつき祐一もまたため息をついた

「まぁなんとかなるだろう、杉並……全隠密部隊を総動員して情報収集に移ってくれ、倉田軍団が先行軍だが無視していい……いずれ仲間になる連中だ、俺達の敵はその次に来る華音第二侵攻軍だ」

「わかった、すぐに始める」

「頼む」

「おう、任せておけ」

そう言い現れた時と同じように姿を消した。

「……佐祐理さんに一弥か、成長したのかな?」

祐一は、前に会った時の二人を思い浮かべ笑みを浮かべた。

だが、すぐに笑みを消し歩き始めた。









「華音、水瀬……秋子……貴様は、俺の手で必ず葬ってくれる!」


その眼には、復讐の炎が見える。










つづく