フェイト達の戦闘は終結し、サイド4・6はジオン公国に属する事になった。
サイド5は、完全に孤立し後日の作戦に使用されることとなった。
同様に、ドズル中将の本体が連邦艦隊に奇襲をしかけこれを壊滅せしめた。
また、サイド2も同様に攻撃を受けこの戦闘で、13億人が命を失った。
そして、遂に悪魔の作戦が発動された。
「やはり間に合わなかったか」
命令書を確認していたフェイトは、変える事が出来なかった現状に嘆いていた。
サイド2の第8番コロニー【アイランド・イフィッシュ】を正規の軌道から離脱させ、核パルスエンジンを搭載し強大な弾頭に見立て地球へ落下させる作戦を立案し発動された。
目標は、連邦本部【ジャブロー】
作戦名【ブリティッシュ作戦】
史実においてそれは行われた。
しかし、フェイトは小惑星の弾道化を提案しなんとか回避しようとしたが結局史実の通りになってしまった。
小惑星を使う作戦が、小惑星の輸送が間に合わずに頓挫してしまった。
もっとも、これにもある人物の横槍が入ったのであるが……。
今回の作戦に、フェイトの艦隊は参加はしない。
物資の補給が間に合わなかったからだ。
手筈では物資の補給が間に合い、この作戦に参加する予定であったが再度横槍が入り物資の搬入が遅れた為に作戦参加が見送られたのだ。
「まあいい、参加は出来なかったが補給は完了した。MSの整備を急がせろ!パイロットは体を休めて待機せよ」
フェイトは、次に来る戦闘の為今出来る限りの指示を飛ばし万全の態勢を整え始めた。
格納庫もまた活気と喧騒に包まれていた。
メイは、作戦終了と同時に帰還して来たモビルスーツの整備に取り掛かっていた。
「ツヴァイのメインシステムの総チャックをして!リミッターを解除したって報告を受けたよ。その影響で、回路が焼き切れてる場合があるから念入りにね!ツダはフレームとバーニアのチャックを!!」
「了解」
「ドムはどうします?」
「損傷箇所の修理と燃料と弾薬の補充を急がせて!」
「わかりました」
大の大人が14歳の少女の指示を受け、素早く格納庫を行き来していた。
フェイトの艦隊は、公正平等な風紀であるが完全実力主義でもあった。
この艦隊で出世するには、自分の能力を遺憾なく発揮し認められる事が必要であった。
その為、誰しもがその力をフルに発揮し作業に当たっていた。
「メイ主任!ツヴァイのシステムの一部で損傷が見つかりました」
「損傷箇所は?」
「バーニアへの伝達部位と武器管制システムで複数」
「予備の部品はあったね?」
「ちゃんと持ってきています」
「じゃあ、すぐさま交換に移って!修理完了したら再チェックする事!」
「了解しました」
メイは、幼いながらもその能力を発揮し旗艦の整備チームの主任を務めていた。
彼女の部下である大人達も、彼女の能力を認め不満なく整備に当たっていた。
「主任!司令から通信が入っています!」
「わかった!」
メイは、ツヴァイのチェックをしていた機械から離れ通信機の元へと体を飛ばした。
「変わりました、メイ・カーウィンです」
『状況はどうだ?』
「やっぱり、ツヴァイの損傷が一番酷いかな。他のモビルスーツは損傷箇所の交換くらいで済んでるけどやっぱりツヴァイはリミッターを解除した影響でシステムにもかなり影響が出てるよ?」
『そうか、早急に頼む。この作戦の成否次第で次の戦闘が早まる可能性が出てきた』
「わかったわ、全機を万全の状態にする」
『二日で頼む』
「見くびらないで、一日でやってみせる!」
『無理はするなよ』
通信が切れ、受話器を置いたメイはツヴァイを眺めながら呟くように言った。
「無理するな……か、フェイトの方が無理してるのに」
フェイトの負担を、少しでも減らそうと自分が出来る範囲で精一杯作業をしていた。
「ジークは、もう目が覚めたか?」
メイとの通信を終えたフェイトは、次に軍医へと通信を繋げた。
『先ほど目を覚ましました』
「怪我などは?」
『疲労と爆発による衝撃による影響による気絶と打ち身程度です。一日程体を休めれば元気になります』
「わかった、他のけが人はどうだ?」
『先の戦闘での負傷は、ジーク中尉が一番重症だったくらいです。他のパイロットなどは、軽い疲労や打ち身程度で済んでいます。今は自室で休んでいる筈です」
「そうか、あとで報告書を回してくれ」
『了解しました』
通信を切ったフェイトは、しばし沈黙したあと指揮を副官に任せブリッジを後にし自室へと向かった。
自分の疲労を感じ休息を取る為だ。
……どうにも嫌な予感が拭えなかった。
現在、フェイト達がいる宙域に敵味方は存在しない。
だが、どうしても嫌な予感が強くなっていく。
「戻るか」
そう思った時、艦が衝撃に揺れた。
「なっ!!」
驚いたフェイトは、一瞬その揺れで体勢を崩すがすぐに壁を蹴りブリッジへと向かう。
ブリッジへと辿り着いたフェイトは、そのまま艦長席を掴み体を固定させる。
「なにごとだ!」
「いきなり艦艇が現れました!!」
「なんだと!!どこの艦だ!」
「形式照合……連邦軍マゼラン級です!!」
「なに!!」
フェイトは報告を聞き、はっとした。
あの悪い予感はこれの事を知らせていたのだと。
「何故こんな宙域に……」
「詮索はあとにしろリット!全艦戦闘態勢に移行!MS隊は順次発進させよ!敵を近づけさせるな!!」
「全艦戦闘態勢に移行!MS隊は順次発進を始めてください。敵の艦隊接近を阻止してください」
通信士がフェイトの命令を即座に各艦へと伝達してゆく。
その間にもマゼランは攻撃を続け、何度か被弾した。
「どこに当たった!」
「第三格納庫です!」
「なっあそこは……ちっ!!」
第三格納庫……ツヴァイを格納し整備している場所であり……メイが整備していた場所だ。
「被害は!」
「幸い軽微です。掠った程度のようですが装甲の一部が損傷したようです!!」
その時、ブリッジに閃光が生まれたのが見えた。
「どれがやられた!」
「第三護衛艦です!マゼランの主砲を受け爆散したようです。生存者はなし!!」
「くそ、各個に応戦せよ!それと、スタッフは第三格納庫から退避させよ。ツヴァイは今回は使えないからな!全員の退避が終わったら隔壁閉鎖!!」
「了解」
『第三格納庫のスタッフは至急退避してください。退避終了後、第三格納庫は隔離閉鎖されます。繰り返します……』
「レーダー士!敵は何隻だ!」
「現在までに5隻を確認しました。!……更に三隻現れました!!」
「くそ、情報が洩れていたな。MS隊の状況はどうなっている!!」
「現在までに、三割が順次発進しています!」
「よし、出し惜しみはなしだ!それと周辺の警戒も怠るな!怪しい岩陰はミサイルで吹っ飛ばせ!!遠慮はなしだ」
「了解!」
フェイトの命令はすぐさま実行に移された。
各戦艦や空母はメガ粒子砲をマゼランに向け射撃しつつ、付近の怪しい岩陰に向けミサイルを連射していた。
その内のいくつかに同様にマゼランが隠れており、ミサイルの攻撃を受けて爆発した岩の破片を浴び爆散した。
MS隊は、発進してすぐにマゼランに接近し持ち前の機動力で次々と撃墜していった。
果敢にも反撃を試みるが、圧倒的な機動力で襲いかかるMSの前に手も足も出ず。
一隻……また一隻と沈んでいった。
「MS隊より連絡!」
「読め」
「はっ!敵戦力の完全沈黙を確認、内一隻を拿捕したとの事です」
「拿捕か……リット」
「はい」
「やり方は任せる、士官から出来る限り情報を集めろ。兵士は拘束してマゼランの格納庫にでも軟禁しておけ。逃亡しそうになったら船ごと沈めてしまえ」
「了解しました」
リットはすぐさま数名の部下と共にシャトルへと搭乗、数機のMSの護衛の下拿捕した戦艦へと向かった。
フェイトは、表面上こそ冷静でいるが内面では怒り狂っていた。
今回の件、どうみても連邦にこちらの動きが筒抜けであった。
コロニーサイド攻略を完了した俺達は、第二分艦隊と合流した後に秘密裏に通常航路から離れ移動していたのだ。
それなのに狙ったかのように我々を待ち伏せしていた。
無論、艦隊が揃っていたのならば遭遇戦の可能性も無かったわけじゃない。
しかし、今回は待ち伏せの為に小惑星や岩の陰に隠れこちらの到着を待っていたのだ。
今回、サイド攻略後の我々の行動は、未だ上層部には報告していなかった。
我々の行動は事前報告ではなく、事後報告で行うことをギレン閣下から許可を貰っている。
その為、内部に内通者がいるのは確かだった。
「しばらくはこの宙域で待機。MS隊は、各自索敵と警戒に当たらせろ。損傷箇所の修理を急がせてくれ。被害報告もまとめて提出させるように通達を頼む」
『了解しました、指揮権を引き継ぎます』
リットが先の命令で艦にいない為、第二分艦隊のグラン大佐に指揮を委ねた。
第二分艦隊がこれより臨時の艦隊旗艦となり、全指揮権を持つ事になるのだ。
そして、フェイトはすぐさま自分の私室へと入り込むとすぐさまある者と連絡を取った。
「仕事だ、やはり君達を連れてきていて正解だったな」
『……裏切り者ですか?』
受話器から男の声と思える声が聞こえ、静かに返事を返してきた。
「そうだ、まだ敵の取調べも済んでいないので断定は出来ないだろうがほぼ間違いないだろう」
『どうします?』
「内密に調べてくれ、各艦の通信記録・外部交流記録など洩らさずにだ」
『犯人を特定した場合の対処は?』
「捕縛して軟禁しておけ、事後でこちらへと報告をしてくれればいい。俺が直接取り調べる」
『……犯人も愚かですね』
「頼むぞ」
『わかりました、早急に調べ上げます』
受話器を置き、すぐさまフェイトは私室を後にするとメイの元へと向かった。
一応検査の為に医務室で手当てを受けていると聞いたからだ。
「メイ、無事か?」
「あ、フェイト!大丈夫だよ!ちょっとあの時の衝撃で体をぶつけちゃっただけだから……」
「そうか、軍医問題は?」
「メイ嬢ちゃんの言う通り問題なしですよ、少し打った程度で痛みも既に引いていますし念の為にスキャンもしましたが異常はありませんでした」
「そうか……良かった」
そう言ってフェイトは安堵の息を吐き、メイの頭を撫で始めた。
メイも嬉しいのか眼を瞑り笑顔を浮かべて撫でられている。
「ブラザー〜……俺の心配は〜?」
すると、その暖かい雰囲気をぶち壊すようにカーテンで仕切られたベッドから声が聞こえてきた。
「軍医、睡眠薬でも打っておけ」
「それはちょっと……」
「おい!!」
「……………ちっ」
抗議の声が聞こえてきたが、フェイトはあえて無視しカーテンを開けた。
そこには、荒縄で雁字搦めにされたジークの姿があった。
「趣味か?」
上から下まで静かに観察したフェイトは小さく言った。
「違うわ!!」
「軍医?」
「えーとですね、先ほどの戦闘で無理遣りモビルスーツに乗ろうとして動き始めた。
その時、傍に控えていたクリス少尉がジーク中尉の顔面に強烈なパンチを叩きこみました。
意識を刈り取った後、どこからか荒縄を取り出し現在の状況にして出撃しました」
「そうか……ブラザー、ダイジョウブか?」
そう言ったフェイトは、ベッドの横にあった椅子に腰掛け右足をジークの体に乗せた。
……加速をつけて。
「ぐはっ!?」
「どうしたんだブラザー?ダイジョウブか〜?」
フェイトは笑顔のまま左足も同じように振り下ろすようにジークの体の置いた。
ジークはやばいくらいに青ざめ、脂汗を大量に掻きながらなんとか笑顔で返事をした。
「……ブラザー……なんか恨みでも……あん……の……か……?」
「なに、どっかの馬鹿が俺の忠告も聞かずにリミッターを解除したりとか?
どっかの馬鹿が、その影響で疲労が蓄積して小さなミスで失態をかましたりとか?
どっかの馬鹿が、負傷しているにも関わらずMSに乗ろうとしたりとか?
どっかの馬鹿が、俺とメイとの心温まる場面をぶち壊しにしてくれたりとか?
……全然気にしてないからな!」
「最後のが一番力入ってた気が……ぐぼぁ?!」
立ち上がった俺は、思いっきりの笑顔で両足を上げ振り下ろした。
ジークは、言葉を最後まで言い切らず苦痛に顔を歪め意識を失った。
「フェイト〜……遣りすぎじゃ……?」
「なに、ブラザーだからな」
「痛いっての!!」
「なんだちゃんと気絶しなかったのか?」
「したっての!!ってか三途の川を渡り掛けちまったじゃねぇか!!」
「軍医、錯乱しているようだ。大人しくさせてくれ」
「……わかりました。ジーク中尉、申し訳ありません」
「ちょっとまて!!軍医さん!なんですかそのぶっとい注射器は!!」
「なに、ただの精神安定剤ですよ。馬の……」
「いやただのじゃないから!っていうか最後になんて言った!!馬用かそれは!!」
ジークの叫び声をBGMに、フェイトはメイを連れて医務室を笑顔で後にした。
メイは少々苦笑いを浮かべていたが、フェイトに連れられそそくさと部屋を後にした。
「誰か助けてくれ〜〜〜!!『ブスッ』ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
つづく
第九話
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