第七話
宇宙世紀0079 1月3日


ジオン公国は地球連邦政府に対し宣戦を布告した。

『地球政府ならびに地球に住む全ての者達に対して告ぐ。私は、ジオン公国総帥ギレン・ザビである。地球連邦政府は──』

「ギレン閣下の演説が始まったな」

全モニターに映し出されたギレン総帥の演説を全兵士は作業をしながらも眺め、今を認識しながら聞いていた。
フェイトもまたドズル中将の指揮下に組み込まれていた。

総帥直営第二艦隊……これが、フェイトの与えられた力だ。
開戦までに行ってきたMSの改良や作戦立案・物資の確保などの功績が認められ、デラーズ閣下に次ぐ信頼を獲得したのだ。
総帥直営第二艦隊の旗艦【ソルディア】にフェイトは乗艦していた。
この艦隊には、ギレン閣下から与えられた特命があった。
各サイドの選別である。
宣戦布告と同時に、秘密裏に各サイドへと進攻する第二艦隊とドズル艦隊。
ドズル艦隊は主に連邦艦隊の撃破の命令を受けていた。
フェイトは各サイドの代表との会談をする事がメインだった。
これは直にギレン総帥に具申した事で実現した事だ。

「メイ、MS隊の準備はどうだ?」

「ばっちりだよ、あれの準備も出来てる」

「ジークの調子は?」

「訓練の時の怪我が少し残ってるけど大丈夫。リミッターを解除しなければ問題ないよ」

「まあ外す事はないだろうな、あいつも」

「司令、各サイドと通信繋がりました」

「慌てて通信してきたか、よし全部繋いでモニターに出せ」

「了解」

オペレーターの操作によって、フェイトの正面にあるモニターに3名の人物が現れた。

「初めまして、私はこの艦隊の指揮を任されているフェイト・クライン中佐です」

『私はサイド4代表のレイニーです。初めまして』

『サイド5の代表バロスと言います』

『こちらは、サイド6の代表グレムと申します』

「さて、今回の同時会談ですが……貴方サイドはどの陣営かはっきりして頂きたい」

『サイド4はジオン公国に従いましょう』

『サイド6も同じです』

サイド4・6の代表はすぐさまそう申し出た。
これは、事前協議によって決まっていた事だ。
だが、サイド5の代表はサイド4・6の申し出を聞き苦虫を潰したような表情を浮かべていた。
サイド5は連邦派なのだ、ここで従ってしまえば連邦との絆に傷がつく。
かといって反対はしにくい。

サイド5は、比較的に地球へと近い為ジオンの手が及びにくかった。
その為、ジオンの息はほとんど掛かっていなかった。

「サイド4・6の意見確かに確認いたしました。サイド5はどうしますか?」

『サイド5は連邦に従う!貴方達はすぐにでも連邦に従い降伏すべきだ!』

この様子に、オペレーターは不安の面持ちで司令官たるフェイトを見て固まった。
フェイトが冷たい笑みを浮かべていたからだ。

「そうですか、それはサイド5全体の意思と言う事でよろしいですか?」

『そうだ!』

サイド5の代表は、フェイトの変わりように気づかず言い切った。

「よろしい、了解しました」

『では、連邦に降伏するのですかな?』

「なにを言ってらっしゃるのですか?我々は勝利します。よって敵を倒します」

『なにっ?!』

ここに来て、フェイトの様子が違う事に気づいた代表は冷や汗を浮かべた。

「サイド4・6に駐留する連邦艦隊の事は気になさらず、我々が殲滅します」

『助かるよ』

『感謝する』

「サイド5に関してはドズル中将に任せます」

『それはどういう事ですか!』

「敵に情報を洩らすとでも?はっ舐められたものですな、我々は敵を倒します。さようなら、サイド5代表」

笑顔を浮かべたまま、フェイトはサイド5の代表との通信を切った。
その様子を見ていた各代表は表面上こそ平静だが、内心ではフェイトに恐怖していた。

「レイニー殿にグレム殿、すぐに我々の艦隊が到着いたします。連邦の艦隊は、私どもにお任せください」

『わかった、市民に関してはこちらに任せてくれ』

『補給なども我々が行おう』

「よろしくお願いしますね」

フェイトはお礼を言い、通信を切った。

「オペレーター、ドズル中将に通信を繋げてくれ」

「了解、繋がりました」

『ドズル司令、フェイト中佐より通信が入っています』

モニターが変わり向こうのオペレーターが移った。
あちらもすぐにドズル中将に声を掛け、画面を移した。

「お久しぶりです、ドズル中将」

『久しぶりだな、フェイト中佐。手筈はどうなっている?』

「予定通り、サイド4・6はこちらの陣営になりました」

『そうか、サイド4・6はそちらに任せるぞ?』

「お任せください、それと新型はどうですか?」

『こちらに送ってくれたやつか、随分良い奴を送ってくれたな』

「いえいえ、兵士の為ですから」

『ふふ、相変わらずか。まあいい、作戦が終了したらこちらに来てくれ』

「わかりました、上等のやつを用意しておきます」

『楽しみにしている、それではな』

ドズル中将は、満足そうに笑顔を口元に浮かべながら通信を切った。

「全艦戦闘態勢に移行、全モビルスーツ隊発進用意」

「全艦戦闘態勢に移行、全モビルスーツ隊発進用意」

副官のリットが、フェイトの言葉を復唱する。
フェイトの命令を受け、全艦に通信される。

「第二分艦隊クラハ少佐に通信を」

「少々お待ちください」

少ししてモニターの映像が切り替わる。

『お呼びですか?フェイト司令』

ジオン軍には、珍しい女性仕官の顔が移った。

「サイド6任せます」

『予定通りでよろしいですか?』

「そうだ、コロニーへの一切の攻撃を禁じる。連邦は潰せ」

『了解しました、では』

短く通信を終えるとモニターは再び切り替わり、サイド4の宙域映像が現れた。

「連邦軍艦艇総数7隻に戦闘機空母1か」

「若干多いくらいですね、ここの戦力は」

リットはしみじみと言った。

「良い情報になるよ」

「予定ポイントに到着しました」

「良し、シャクルズを射出しろ。射出終了後、モビルスーツ隊の発進開始」

「シャクルズ射出開始します」

ソルディアから命令を受け、ソルディアの両脇にいたクラストール二隻から次々とシャクルズが射出され始める。




さぁ、俺達の戦闘の幕開けだ。


つづく