二十一章
ここに、敵として別れていた者達がいる。

かの者達は幼少の頃、仲良く遊び学んだ者達だが成長するにつれ会えなくなった。

その者達が今、再会する。





魔争戦記

二十一章





ライネリア城 王室

派手さはなく、程よい調度品が備えられた王室の中に祐一は一人窓から外を眺めながら待っていた。
ある者達が来るのを静かに待っていた。

すると、扉を叩く音が聞こえた。

「誰か?」

『閣下、両名をおつれしました』

「入れ」

「失礼します」

祐一の了解を取り、扉を開け中に入る。

「閣下、華音第二侵攻軍の総司令官と総参謀長をおつれいたしました」

そう言った兵士の後ろには、手錠をつけた二人とそれを囲むように数名の兵がいた。

「お前達は下がれ」

「しかし……」

「下がれ、それと手錠も外してかまわん」

「畏まりました」

そう返し、手錠を外した兵士は部屋をあとにした。

「さて、両名ともそこに座れ」

二人を傍にある椅子に腰掛けるように言う。

「……なにを企んでいるんです?」

「なにとは?」

「何故、無防備に私達を呼んだのですか?」

「久しぶりの再会に武器など無用であろう?」

「再会?」

「忘れたのか?ミッシーに久瀬」

祐一はそう言いながら振り返る。

「「な!?」」

「久しぶりだな」

「祐一さん!」

「祐一君!!」

「くっくっく……変わらないな、二人とも」

「まさかエタニアの次期国王の相沢 祐一って君の事だったのかい?」

「そうだよ、予想付かなかった?」

「同名と思うのが普通かと……」

「ですよね、あの時の彼って本当に流れの旅人風でしたし」

「ですね……でも、ただ再会をする為に私達を呼んだわけではないんでしょう?」

「そうですね、普通に考えて君がそれだけの為に生かして私達を捕まえるはずないですし」

「………(汗)」

「祐一さん、何故目を逸らすんですか?」

「まさか本当に?」

「まぁそれはいいとして、二人にはこちら側について欲しい」

「先程も言ったように寝返れと?」

「そうだ、いずれこの大陸は戦乱が始まる……エタニアと華音の戦争はその発端に過ぎない」

「───祐一さん、一つ聞かせて欲しいのですけど」

「なんだい?」

「祐一さんは何を求めるのですか?」

「永久なる安定を」

「エタニアによってですか?」

「いや、必要な国で分ける」

「………わかりました、では私は祐一さんに従います。しかし、裏切った時は……容赦しませんよ」

そう言って天野 美汐は祐一に深く頭を下げた。

「うん、久瀬はどうする?」

「………祐一様に従います」

「そうか、両名を歓迎する……すず」

「────はい」

「酒とグラスを三つ頼む」

「承知」

「………今のは?」

「最近、我が配下となった者だ」

「そうですか………」

「祐一様、お持ちしました」

そう言って、すずはいつのまにか姿を現しグラスを渡す。
祐一達はグラスを持ち、すずはそのグラスにお酒を注いでいく。
全員に注ぎ終えると、すずはその姿を消した。

「では、我らの未来に幸多きあらんことを………乾杯」

「「乾杯」」

三人はグラスのお酒を一気に飲み干す。
飲み干し……空になったグラスを床に叩きつけ割る。
ある種の儀式である。

「これより両名は我の命に従い、我の為に死ね」

「「御意」」

二人は床に膝を着き、手を確りと合わせ宣言した。











さて、エタニアが落ち着いた頃……華音帝国では小さな動きがあった。

ONE派遣軍が華音帝国首都に到着したのだ。
彼らはすぐに部隊の大部分を首都近郊に待機させ、自分らと少数の護衛を伴い華音帝国の王城に入城した。

折原と長森はすぐに王広間に通された。

「わざわざよく来てくださいました、折原師団長に長森副師団長」

「ありがとうございます、水瀬女王陛下」

「恐悦至極にございます」

二人は片膝をつき、頭を垂れ感謝の言葉を述べる。

「華音第二侵攻軍の応援の為に派遣された貴方方が何故こちらに?」

秋子は王座に座り、余裕の笑みを浮かべつつ二人に問うた。

「恐れながら女王陛下、我らが到着する数刻前に第二侵攻軍は壊滅状態になりました」

「………そうですか、それで何故我が首都に?」

秋子はさして驚かず、冷静に用件を聞いた。

「女王陛下は既に第三侵攻軍を組織中との事、それに同伴したいと思い馳せ参じました」

「それをどこで知ったかは問いません、いいでしょう……同行することを許可致します」

「「ありがとうございます」」

二人は形式上頭を下げ、礼を述べる。

「後ほど詳細を説明致しますので、それまで自軍に戻り待機していてください」

「「御意」」

二人は立ち上がり、礼をした後足早に王広間を後にした。
二人が去り、誰もいなくなった王広間で秋子は呟く。

「どこでこの情報が漏れたの?」

「……洩らした奴がいる」

「……処分は?」

「既に始末した、以後洩れる事はない」

「そうですか、よろしくお願いしますね」

「わかっている」

秋子は誰かと話しているようだがその姿は見えず、またその話してたやつの声も途切れ秋子は静かに微笑んでいた。













つづく