彼らの日常
 逆襲の双龍 特別編 相互記念SS
        彼らの日常
      


 金属が触れ合う音。
 恋人の会話。
 数人でグループになっている学生達の会話。
 注文を取りにいくウェイトレスの足音。
 注文を確認するウェイトレスの声。
 洒落た内装―――しかし、男が一人で入るには少し勇気がいるかもしれない。そんな、百花屋店内。
 彼と彼女らの指定席、商店が立ち並ぶメインストリートに面した窓際。一番奥の席。
 銀のスプーン。
 小さめのそれの上にチョコレートケーキの先端を乗せて。
 ぱくり、と少女は満面の笑顔で頬張った。

「美味いか?」
「うんっ」

 彼と少女の、ここに来るたび繰り返す会話。
 そして、彼女はそれを我が子を見るように、そして喜びと愁いの混じった笑顔で見守る。
 すっ、と優雅に。
 彼、相沢祐一がコーヒーカップを口元へ運ぶ。
 それを見て、彼女、倉田佐祐理が微笑んだ。

「ん?どうした?」
「いえ、だいぶ変わりましたね〜」

 にこり、と微笑んで、彼女が言う。
 訝しげな視線。彼女がそう思うのは無理はないのかもしれない。
 彼女と彼が最初に出会ったとき、彼の行儀作法は上品でも、かといってそれほど下品と言うわけでもない、至極平凡に感じた。
 けれど。
 彼女は瞳を閉じる。彼と過ごした一年を。思えば、こんな余裕をもてたのはつい最近。目の前の少女、ヒュルと出会ってから。それまではただ我武者羅に、修行に、情報収集に。なにがなんでも、どんな手を使っても強くなるために。
 それでも、食事や水分は必要。火をおこして、一緒に食事をした。そうして顔を合わせて過ごす内、彼は彼女を見本としていたのだ。それまでも、彼は彼女の行儀作法に感心していたせいもあって。
 口の渇きを感じ、彼女はティーカップに手を伸ばす。
 ふと、感じる異臭。

「水よ、我が意に応えよ、我が敵、我を死を招く毒を、浄化せよ」

 小さく、彼女が呟く。口を動かさず、傍目にはティーカップを口元に運ぶ速度がややゆったりとしているようにしか見えない。そのゆったりとした動作は、気品と優雅さに満ち、自然。
 紅茶を飲み、ティーカップを下ろす。と、祐一を目が合う。
 彼女の呟きにも似た詠唱は、彼にだけは聞こえたらしい。
 丁度、ヒュルの目の前のチョコレートケーキも彼女のお腹へ消えたところ。
 テーブルに立てかけた刀と伝票を持って、祐一が立ち上がる。
 もう帰るの?そんな顔をしながら、しかしヒュルも続き、最後に佐祐理が立ち上がる。メインストリートに一瞬だけ視線を向けて。

「ありがとうございました〜」

 店員に見送られ、レジに背を向け、佐祐理は自分の腕を祐一に絡ませる。ヒュルがそれを見て、本当に、本当に少しだけ、雰囲気を変える。
 扉を開けて、外に出て。

「はぁぁぁぁっ!!」

 ギィン!
 メインストリートにいる中で、それを見ることが出来たのは、祐一と佐祐理のみ。そして祐一の抜刀。それに気づけたのは、ヒュルと敵の部隊の隊長のみ。
 他のものには、抜刀した、と言う事実はわかっても、それがいつの瞬間されたのかすら分からなかった。それは、百花屋の屋上から奇襲をかけた女性も同じ。
 その速さは威力も伴い、奇襲をかけた女性は、空中で踏ん張ることも出来ず、吹き飛ばされる。
 受身をしつつも、地面に叩きつけられ、ボールのように撥ね、転がる。
 メインストリートを行き来する人々が気づき、驚愕と恐怖の表情を、悲鳴をあげるまでの一瞬。その、一瞬の静寂の中で。
 祐一が、口を開く。

「来い」
「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 祐一が、佐祐理が、ヒュルが、無表情になり。
 彼女達、“ワルキューレ”部隊が3人に襲い掛かる。
 人々は逃げ惑い。

――――彼らの日常は、今日もまた、一時の幸せと戦いに満たされる。




















 あとがき。
 というわけで、フォンロン様への相互記念SSです。本編知ってないとさっぱり、かもしれませんが――――これは、第八話と第十話、少し期間が開いた日々、その中のある一日、”彼らにとっての日常”を書いたものです。
・・・・・・・・・短いっ!と思った人、挙手。大丈夫君だけじゃない、僕も思ったから(マテ
 すいませんそこらへんはIceの力量不足です。どうしても一話が長い文章というのが苦手で(汗
 勢いで書くからでしょうか?そのせいで誤字脱字多い、と言う意見には、作者ノーコメントというか、ぐぅの音も出ません。
 うぐぅの音だって出ませんから(涙
 では、フォンロン様、相互依頼、本当に感謝です。


 感想デス!
さっそく送っていただき感謝です 頭が下がります 
では感想を
祐一たちの逆襲の双龍での日常を垣間見れた作品でしたw+(≡▽≡ )
意外とは言わないけれど祐一の華麗なる礼儀作法・・・ふむ、意外と使える・・・
後日にでも礼儀作法の勉強をして取り入れよう!(マテ
とはいえ
投稿ありがとうございました!
Ice様、これからも多彩のSSを書き残しいつかは伝説と言われた物書きにおなりください!
魔狼の住処 管理人 フォンロン