私、香坂夏見は今・・・・恋をしています。

そう、あの人と初めて出会ったのは…あるアンティークショップでした。



「いらっしゃい」


そう言って、店に入ってきた私を迎えたのは若い男性だった。



「おや、珍しい」



私が珍しいのか…それともお客さん自体が珍しいのかはわからなかったけど、彼の眼はなにか温かく見守るあのお爺様の眼のようで不快な感じはしなかった。



「どうぞ、お好きなだけ見て行ってください…用がありましたらそちらの工房にいますので、お気軽にお声をおかけください」



そう言って、その人は工房に戻って行った。



「(そこまで豪華な印象はないけど……でも、なぜか心惹かれるアンティークばかり…)」



私は、ケースに入っている様々なアンティークをじっくりと鑑賞していくと、一つだけ値札のついていない品があるのを見つけた。


それは…



「インペリアルイースターエッグ?(でも…)」


私がそう呟き、驚き困惑している時に後ろから…



「それは私の作品ですよ」


「え!?」



いつのまにかやって来ていたあの人が私にそう言った。



「この作品はインペリアルイースターエッグを元にして、私独自の技術を盛り込んだある人の作品です」



そう言って彼はケースの鍵を開け、エッグを取り出して…そのエッグを開き、中を見せてくれた。

エッグの中にはニコライ皇帝一家の姉妹の像が横に並んでいた。その両脇には花畑のような装飾が施されていた。



「この鍵を使って回して見てください」



そう言って彼は私に鍵を渡し、回す場所を教えてくれた。

二度ほど回し、鍵を抜くとそのエッグはオルゴールが静かに鳴り、姉妹の両脇に施されていた花畑の花のつぼみが静かに開き、その光景を笑顔で見ている姉妹の図へと変わっていた。



「大丈夫ですか?」



私は彼の言葉とハンカチを渡してくれた時、初めて気がついた。

私は……泣いていたのだ。



「どこかお体の具合でも?」



彼は心配そうに私を見ている。



「いいえ、ただ……感動しただけです」

「そうですか……よし、貴女にこれを差し上げましょう」

「え?!でも、これは……」

「売る気はありませんでしたよ?でも、貴女にはこれが必要そうですし…それに貴女が持っているほうが何故だかいいような気がします」

「!……ありがとうございます」



そうして、私は木箱に納められたエッグを手にお礼を述べる。



「そうそう、ヒントをあげましょう……光を使うんですよ?」

「ぇ?」



耳元でそう言われ、驚き後ろを振り返ると…私はいつのまにか外に出ていた。

困惑し、もう一度先ほどの意味を聞こうとお店の方を向くと……そこはなにもないただの更地だった。

おかしく思った私はその隣にあるお店に聞いて見ると…



「ん?アンティークショップかぃ?んーお客さんで三人目だね、この地に店は立ったことはないよ?何故だか知らないけど、ずっとこのままなんだ」



お店の主人がそう言っていた。


私は狐に化かされたのかっと思ってしまいそうになったけど、手にある木箱……インペリアルイースターエッグがそれを否定させる。







「It continues eternally and is the thought…」



永久に続けその想い




このエッグの名前……



















そして、私は帰路につき執事の蔵之助さんに話してみると…


「なんですと?!まさかそんな…」



眼を見開き、そのエッグを見つめる。



「お嬢様、このエッグは喜一様が作ろうと思われていた作品でございます」


そう聞かされた時、私は驚いた。


「このエッグを作られたのはおそらく、お嬢様が会われたと言われる男性でしょう…喜一様は製作図だけお書きになっただけでございます」


「彼は私にヒントは光を使うことって言っていました…まさか?」

「おそらく、この中に光度計が内蔵されているのでしょう・・・」





それから数日後、私は横須賀にある燃えてしまったお城の地下に行った…

あのエッグと共に…



あの台にライトを入れ、その上にエッグを乗せる。

エッグは自動的にオルゴールが鳴り響き蕾が開いた。

そして、その花から光が伸びた


「わぁ……」


それは……曾お爺様と曾お婆様の写真が何枚も映し出されていた。

メモライズエッグにはなかった写真だ。

そして、その中の一枚にあの時出会った人と曾お爺様と曾お婆様が椅子に座り談笑している写真があった。


「やはりあのお方ですな」

「あのお方?」

「喜一様とマリア様のご友人でお名前は、たしか……様と申されたはずです」

?」

「はい、様はこう申されたそうです。『私は永き時を生き死ぬ事はない、だが…我は後悔していない』と、喜一様の日記に書かれておりました」

「でも、曾お爺様とご友人なら既に他界しているか、もしくは百歳は超えてると思いますけど……?」

「そのお方は不老だと言われました、実際私が旦那様にお仕えした時にも数度お会いしましたが、まったく歳をお取りになっておられない様子でした」



何者なのだろう…不老なんて…



……」

「あの方は自分を旅人と言っておりました、今もどこか旅をしていらっしゃるのでしょう」

「そう、まずは直接会ってお礼を言わないといけませんね」

「恋をなされましたか?」

「え!?」

「ふぉっふぉあの方は良くも悪くも人を惹きつける、ご覚悟なされませお嬢様、あのお方は一筋縄では参りませんよ」

「望むところですわ」









いつか会って見せます、その時こそ返事をくださいね さん
















END